”うつくしく”
若いころ、美しさに狂おしいほどに憧れた。
目鼻立ちのくっきりとした顔、ぱっちり大きな目、すっと細い鼻筋に薄いくちびる、すらりとした細いスタイル。そんな女の子に憧れて、毎日重ねに重ねてお化粧をした。きらきらしたネイルにまつ毛エクステまつ毛パーマ、カラーコンタクトに高いヒール、etc...と、もう盛り盛りのもりもりでおなかがいっぱいになりそうなほど。
足りない、足りない、もっとかわいくなりたい。わたしはとにかく必死だった。
だけどいつからだろう、もういいかなあ、と肩の力が抜けたのは。結婚式を迎える前後だったかな。その頃からモノを減らして暮らしをシンプルにし始めた。髪の毛はもうずっとショートカットだったけれど、式を終えてカラーリングを辞めた。大好きだったグレーのカラコンも手放した。バサバサまつ毛は苦しそうだったから、たまにお湯落ちのマスカラを塗る程度にした。
その代わり、式に向けて8kgほど落とした体重はキープ。コンプレックスだった歯並びは歯列矯正で整えた。ファンデーションを塗らない日を増やすと肌トラブルが少なくなった。
鏡に映る自分はなんだかすっかりシンプルな顔と体になったけれど、ふむふむなんだかいい感じ。あれ、もしかしてシンプルってとっても心地良い?
安い化繊の服ばかりたくさん買っていたけれど、そうだ、わたしは肌がめちゃくちゃ弱いのだ。コットン、シルク、そんなふんわり軽くやわらかな素材に身を包むとびっくりするくらい気持ちよかった。
自分にやさしい素材やものを選び、使うこと。そうして自分を大切にしていくこと。すっかり大人になった今はそんな毎日が心地いいなあと思うのです。
仕事終わりに9cmヒールで飲みに出かけていたわたしはもういない。あのきらきらした毎日はとても楽しかったけれど、わたしはもう自分の足が痛むことはやめることにしたのだ。
ありがとう、きらきらの毎日
これからは足していくのではなく引き算の美しさへ。
小さく、まるく、うつくしく、の
"うつくしく"についてのお話でした。